「藁の楯」について

映画「藁の楯」が2013年4月26日全国で公開されました。原作は、ビーバップハイスクールでお馴染みのきうちかずひろ氏が本名の木内一裕名義で発表した処女作です。

監督は『十三人の刺客』や『クローズZERO』『悪の教典』などの作品で知られる三池崇史氏。出演は凶悪犯を護衛する警察のSPに大沢たかお、松嶋菜々子、そして連続殺人犯、清丸を藤原竜也が演じました。人間の正義とはなにかを考えさせられる問題作です。

さらに、5月下旬に開催された第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にも出品、公式上映会では大きな拍手と温かいスタンディングオベーションに包まれたそうです。

この映画は、迫力ある空撮シーンや手に汗握るカーアクションなど、スケールの大きいアクションが見所ですが、このようなシーンで駆使されるのがVFX(3DCGを使って特殊映像を作成し、実写映像と合成させる)です。
スペック五次元は、本作品中のVFXに使用する自動車3Dモデルを制作協力しました。

FESTIVAL DE CANNES
実写の写真から忠実に再現するモデリング

今回担当したモデリングはパトカー、トレーラー、移送車、覆面パトカーなど。特に迫力あるVFXのタンクローリーシーンをピックアップしてご紹介します。

まずモデリングを始める前に、今回発注をして頂いたOLMデジタル様と打合せを重ね、どのようなシーンで使われ、どの角度で一番接写で見られるかなど、絵コンテをベースにモデリング精度のポイントを擦り合わせました。

図面を使わずディティールまで再現する

作成素材として実際に撮影で使用されたタンクローリーを、モデリング用に撮影してもらい、その写真を見ながら制作を進めていきます。

スペック五次元では通常カタログの三面図などを使用して作成しますが、今回は写真のみでしたので、細かいディティールを写真から読み取るしかありません。そこで、それぞれの部位を細かく撮影してもらうことで制作はスムーズに進行できました。
しかし、実際の車とサイズの差異が出てしまい、それがどの箇所だったのかが分かりにくかったので大変苦労しました。またVFXで合成した際に、実際の車との見た目の違和感がないかということにも気を配りました。

ちなみにネタばらしとして、撮影用のタンクローリーは実はアルミカラーではなく白い普通のタンクローリーでした。これを美術部の方々がアルミホイルを貼り付け、古ぼけたテイストを演出していました。 ここに美術部さんのノウハウがありますよね。

実際に納品したモデリングデータ
実際に納品したモデリングデータ

実写の画像とカメラマッチングを行い、修正を重ねて出来上がったモデルデータがこちらです。
質感がついていないクレイモデルの状態ですが、ここからOLMデジタル様が魔法を掛けていきます。 まずは合成されていく様子を映像でご覧ください。

ここまでの映像にするまでには、いろいろな工程や苦労があったと思われます。迫力ある見事な演出を実現させたOLMデジタル様に、VFX合成のノウハウなどをお聞きしました。

MOVIE
本物の迫力あるスケール感を演出する

「タンクローリーが爆発しているカット」がありましたが、このシーンでモデリング、シェーディング、セットアップに関して、特に気を配られた点はありましたか?

まずモデリングでは、タンクローリーのモデル(スペック5次元作成)を、実写撮影されたものと照らし合わせ、破壊された部分のディティールをより細かく作り込みました。次にシェーディングでは、撮影されたタンクローリーを参考に、迫力あるスケール感を再現することを重要視して質感付けを行ないました。セットアップを組む際は、タイヤや壊れたパーツなどの可動部分をより複雑に動かせるような構造を意識しました。

またパトカーなど各車のモデルは、回転灯を搭載した上、質感付けを行なっています。ハイライトの入り方にリアリティが出るよう、繰り返しテストも行ないました。

ディティールを詰める際の修正指示

ディティールを詰める際の修正指示

カット作成ワークフロー
1.
空撮された実写素材にCGをはめ込む為にカメラのトラッキングを行い、CG上でカメラの動きを再現します。
flow01
1.
実写素材からCGと置き換える必要のある車体を選び、丁寧に消します。
(アニメーションの付いたCGの車と置き換えることで、爆発の影響がタンクローリーのみでなく、周囲にまで広がっていることを表現する為)
flow02
1.
タンクローリーとその周囲の車にアニメーションを付け、ライティングの作業を行ないます。
タンクローリーに実在感を持たせる為、ライトの強度設定等で試行錯誤を重ね、「1」で作成したカメラにてレンダリングを行ないます。
flow03
1.
レンダリング時には、カラーやスペキュラー、オクルージョンなど、様々な素材をパス分けして出力することで、コンポジット作業の際により繊細な調整をすることを可能にします。

※主要なパスのうち、いくつかの物をピックアップした参考画像がこちらです。

flow04
1.
爆発による炎を合成し、周囲への照り返しや、吹き飛ぶ破片のエフェクトを追加します。
flow05
1.
最後に、色合いの微調整を行って完成です。
flow06
主要なマルチパスのピックアップ画像
形状確認用レンダリング
バランスのよいポリゴン構成で扱いやすいデータに

OLMデジタル様から見て今回のプロジェクトはいかがでしたか?
モデルのクオリティや作業スピード感についてご意見をお聞かせください。

今回のプロジェクトでは、短期間に多くの車種のCGモデルを作成する必要があり、またカットによって、CGモデルとカメラの距離が近かったり、遠かったりと一定でなかった為、モデルのディティールをどの程度作り込むかが重要な点になりました。
そこで、スペック五次元様と何度もご相談させていただき、全てのカットに対応でき、なおかつ重すぎず適正と思われる各車のポリゴン数を設定することができました。
作成していただいたモデルは、fbx形式で受け取り、3D作業はmayaを使用いたしました。

短い制作期間にもかかわらず、ポリゴンの流れに気を配っていただき、クオリティの高い状態に仕上げていただきました。カメラからモデルまでの距離が近い場合はモデルをスムージングして使用しましたが、角の部分等も丁寧に作り込んで頂いた為、非常に良いレンダリング結果を得ることができました。

タンクローリーのモデルは、写真を参考にモデリングしていただきましたが、無駄のないポリゴンの構成でバランスも良く、また細かい修正に幾度も対応して頂き、ディティールを足す等の作業の際、非常に扱いやすいモデルデータになっておりました。

その他の使用シーン

今回ご紹介したタンクローリーシーン以外で、スペック5次元作成のモデルが使用されたシーンはこちらです。

このプロジェクトストーリーに参加して頂きましたOLMデジタル様、配給会社「藁の楯」製作委員会関係各社様には、多大なるご協力をいただきまして大変感謝いたします。

MOVIE MOVIE
ブルーレイ&DVD『藁の楯 わらのたて』
藁の楯クレジット
原作:
木内一裕
監督:
三池崇史
脚本:
林民夫
音楽:
遠藤浩二
製作指揮:
城朋子、ウィリアム・アイアトン
エグゼクティブプロデューサー:
奥田誠治、小岩井宏悦
プロデューサー:
北島直明、坂美佐子、前田茂司
撮影:
北信康
照明:
渡部嘉
美術:
林田裕至
録音:
中村淳
装飾:
坂本朗
編集:
山下健治
助監督:
渡辺武
音響効果:
柴崎憲治
CGIディレクター:
太田垣香織
キャスティングプロデューサー:
伊東雅子
ラインプロデューサー:
今井朝幸、善田真也
制作担当:
堀岡健太、中島正志
台湾製片:
張華坤
警察監修:
古谷謙一
製作幹事:
日本テレビ放送網、ワーナー・ブラザース映画
製作:
日本テレビ放送網、ワーナー・ブラザース映画、オー・エル・エム、講談社、Yahoo! JAPAN、ジェイアール東日本企画、読売テレビ放送/STV・MMT・SDT・CTV・HTV・FBS
制作プロダクション:
オー・エル・エム
制作協力:
楽映舎
台湾協力:
城市電影公司、台北市政府、台北市文化局、台北市電影委員會、台灣高速鐵路股份有限公司
配給:
ワーナー・ブラザース映画